ロードセル入門
6章 ロードセルの使用方法
01. 負荷条件
ロードセルの選定方法は次のようになります。
計量を行うのにどういう方法が最良であるかを判断し、ロードセルの負荷条件を決めます。(引張、圧縮、曲げなど)
02. 定格容量
定格容量の選定は次の二つの事項を考慮します。
001. 必要とする分解能が表示できるかどうか
定格容量に対し一目の値が小さい場合はその一目に対してのロードセルの出力電圧が表示器の入力感度の適合範囲内にあるかどうか検討します。
ここに斜面はかりがあります。
図 6.1
なかみを見てみましょう。
図 6.2
計量皿に加えた力をロードセルが電気的信号に変換し表示器に信号を出しています。
ロードセルの仕様は次のようです。
定格出力が 1mV/V 、印加電圧を 10V かけた時最大出力は 10mV になります。
これは6kgの荷重を掛けた時の出力電圧値になります。
このロードセルを使い 6000g のものを計って 1g まで表示するとします。 1gは最小表示といいます。
ここで 1g に対して何 mV が出力されるかを計算してみます。
荷重が 6Kg の時 10mV なので
になります。
表示器は入力感度が1.6μVより小さい物を使います。
表示器の入力感度が1.8μVだとしたら1g表示はできません。
002. ロードセルの強度による選定
台はかり
LC4001~LC4212(シングルポイント型ロードセル)を使用して台はかりを作る場合、ひょう量は定格容量と等しくてかまいません。
つまりひょう量 100g のはかりを作る場合、定格容量が 100g のロードセルを使用ということになります。
ただしこの場合風袋(ふうたい)荷重はロードセルの最大許容風袋荷重以下にする必要があります。
もし風袋が非常に大きな場合は、定格容量+最大許容風袋荷重を定格容量として取り扱います。
工業用ホッパスケール等
はかり用ロードセル以外のロードセルの定格容量は次の方法で選定できます。
ただし、過負荷、横荷重が加える恐れのある場合は定格容量を大きくする必要があります。
L : 定格容量
N : ロードセルの使用個数
W1 : 計測正味重量
W2 : ホッパーの重量(容器の重量)
f1 : 動係数(通常 1.3)
f2 : 偏心係数(通常 1.2)
f3 : アンバランス係数 (ロードセル3本 の時 1.0、ロードセル4本 の時 1.2)
たとえば、正味重量 8t、ホッパー重量 3t、ロードセル4個使いの場合
結果、5t のロードセルを 4本使用が望ましいということになります。
003. 測定精度
次に測定精度を満足できる仕様であるかチェックします。
測定精度に影響する要素は直線性、ヒステリシス、再現性、ゼロ及びスパン温度影響です、最近は、直線性、ヒステリシス、再現性をまとめて総合誤差で表ことが多くなっています。
必要な精度をεとすると下記の計算式で求めることができます。
【1】カタログに総合誤差と記載されている場合
ε : ロードセルの測定精度(%)
εC : 総合誤差(%)
εZ : 零点の温度影響(%)
εS : 出力の温度影響(%)
L : 使用するロードセルの定格容量
N : 使用するロードセルの数
W1 : 計測する最大の荷重
t : ロードセルの温度の変化幅(℃)
【2】カタログに直線性、ヒステリシス、再現性を個別に記載されている場合
ε: ロードセルの測定精度(%)
εL : 直線性誤差(%)
εH : ヒステリシス誤差(%)
εR : 繰返し性誤差(%)
εZ : 零点の温度影響(%/ ℃)
εS : 出力の温度影響(%/ ℃)
L : 使用するロードセルの定格容量
N : 使用するロードセルの数
W1 : 計測する最大の荷重
t : ロードセルの温度の変化幅(℃)
この式で実際に問題とならないものは削除します。
たとえば、温度変化があってもゼロ点の変化はゼロキーを押すことにより誤差となりません。その場合 の項を削除します。
また、用途によっては分解能を高くしたいが温度変化考慮しなくてもいいなどのこともあり、使用法を考えて柔軟な決定を行います。
実際計算式を使い測定精度を計算してみます。
LC4102-K010を使用し、10kgのはかりを作るとします。
温度範囲が 20±10℃ として計算します。零点および出力の温度影響の数値は10℃の時の値になっていますので1℃のときの数値に直します。温度の変化幅は±10℃ですので 20 となります。また、零点は測定時にゼロキーを押すものとすれば零点の温度影響は考慮しない計算になります。
では実際に数値を当てはめていきます。
εC : 総合誤差(%)・・・・・・0.015
εZ : 零点の温度影響(%/ ℃)・・・0.004(カタログでは10℃で記載されているので1℃の値にします)
εS : 出力の温度影響(%/ ℃)・・・0.0014(これも1℃の値にします)
L : ロードセルの定格容量・・・・・・10kg
N : ロードセルの数・・・・・・1
W1 : 計測する最大の荷重・・・・・・10kg
t : ロードセルの温度の変化幅(℃)・・・零点の温度影響はゼロキーを押すので0、出力の温度影響は±10℃なので温度差は20
004. 環境
ロードセルを水蒸気、腐食性ガスなどの環境条件で使用するときは、耐食性のロードセルを使用します。 耐食性、耐環境性が高いロードセルは一般的に密閉型といわれるものです。その中でもステンレス製のロードセルはより高い耐性があります。
爆発性危険物雰囲気なかで使用する場合は、本質安全防爆、耐圧安全防爆などの認定を受けたロードセルを使用する必要性があります。
03. 使用上の注意
一般的注意事項
- 一般的に電気を流すケーブルには導体抵抗があります。これにより温度の変化によってケーブル内に流れる電圧が変わります。ロードセルケーブルも同様で導体抵抗が温度変化によって変化します。ケーブルが 長い場合は無視できません。このようなときはインジケーターのセンシング回路を使用して補正することが できます。
- ロードセル及びロードセルケーブルに近接して高圧電源がある場合は空間距離 300mm 以上を保って別配管処理し誘導障害から回避する必要があります。ロードセルケーブルはシールドケーブルを使用します。
- ロードセルとインジケータの間にジャンクションボックスなどを使用する点検、交換などのメンテナンス時の配慮をします。
- ロードセルケーブルのシールドはロードセル側で浮かしているのでインジケータ側で1点接地します。ジャンクションボックスで中断する場合シールドの渡りを取り、シールドが寸断されないように処理します。アースが多点になると接地間の電位差が生じ、ノイズを誘起しやすい状態になります。
- 温度変化が急激な場合はロードセル外部と内部に温度差を生じ一時的に特性が変化する場合があります。これを過度温度特性と言って対策が必要になります。
- 電気溶接はロードセルを取付ける以前に終えておきます。もし取り付けたあとにおこなう場合はロードセルに電流を流さないようにします。
- 低容量のロードセルは固定側にケーブルを固定しコードによる影響を排除します。