電子天びん使用時の注意点
8. 重力による誤差
A)重力とは
地球上の物体は、地球の中心に引っ張られる「万有引力」と 地球の自転に伴う「遠心力」を絶えず受けています。
重力は、万有引力と遠心力の合力となります。 重力の大きさ(F)は、重力加速度(g)と物体の質量(m)の積で表します。
F=mg
電子天びんは構造上、試料にかかる重力を質量として測定しますので、重力加速度が変わると、表示値も変化します。
重力加速度は、緯度と標高によって変わります。
B)場所による重力加速度の変化
緯度による変化
地球の自転により遠心力が発生し、万有引力と反対の力が作用します。これは、赤道付近が最大で両極が最小になります。つまり、赤道では重力加速度が小さくなり、両極では大きくなります。
北海道の重力加速度 > 沖縄の重力加速度
標高による変化
同じ緯度であれば、標高が高い方が地球の中心からの距離が長くなるので、重力加速度は小さくなります。 例えば、500g分銅を地表で測定する場合と、標高100mの地点で測定する場合は、下の数式になります。ただし、地球の半径は6371000mとしています。
C)重力加速度の影響
製造拠点(茨城)で、100.0000gの分銅で校正した電子天びんを国内の各都市に持って行き、同じ分銅を測定するとどうなるでしょう。
場所 | 重力加速度(m/sec²) | 分銅の測定値(g) | 製造拠点との差分(g) |
---|---|---|---|
札幌 | 9.805 | 100.05 | 0.05 |
仙台 | 9.801 | 100.01 | 0.01 |
茨城(製造拠点) | 9.800 | 100.00 | 0.00 |
東京 | 9.798 | 99.98 | - 0.02 |
名古屋 | 9.797 | 99.97 | - 0.03 |
大阪 | 9.797 | 99.97 | - 0.03 |
福岡 | 9.796 | 99.96 | - 0.04 |
那覇 | 9.791 | 99.91 | - 0.09 |
※理科年表より
この影響をなくすため、分解能の高い電子天びんは、使用する現地で校正します。また、分解能の低いはかりは、使用地域での重力加速度を設定します。