『計量豆知識』
計量技術情報 【計量豆知識 第1回】
1. そのケーブル、太すぎませんか?
皆さんはロードセルケーブルをどの様に選んでいますか?
お客様の現場を拝見すると、必要以上に太い電線を使用している例をしばしば見かけます。
おそらくこれは、ロードセルケーブルの抵抗分による測定誤差を案じての事だと思われます。
確かに1970年代頃までは、導体抵抗や温度変化による影響を受けにくくするため、可能な限り太い電線を使用するのが常識でした。
現在では弊社のすべてのウェイングインジケータ※1に「リモートセンシング」が付いており、この機能を使用する事によって太い電線を使用する必要がなくなっています。 リモートセンシングとは、ロードセルの印加電圧※2の変化を監視し、その変化分をA/D変換時に補正して誤差を相殺する技術です。 ケーブルは印加電圧を監視する線を2つ足して6芯のものを使用します。 ロードセルケーブルを細くすることはコストダウンにもつながります。 設置費用軽減のためにも、最適な太さのケーブルを使用することをお勧めします。
- ※1
- ウェイングインジケータ:
重量指示計 = 計量に使用することを目的にした指示計 - ※2
- 印加電圧:電気回路に別の回路から電圧を与える事、ここではウェイングインジケータからロードセルに電源を供給することを示す。
2. ロードセルが力を最大限発揮するためには?
ロードセルは非常に微小な電圧を出力するセンサです。ウェイングインジケータの指示値に換算すると、指示値1目盛あたり0.5μV以下になることも珍しくありません。(この電圧は乾電池の約1/300万に相当する微小電圧です。)しかも、出力電圧が印加電圧に比例するという性質を持っています。 というわけで一見ロードセルの配線・結線は非常に難しいという印象を受けますが、いくつかの大事なポイントを守って配線・結線をすれば極力誤差をおさえた接続が可能になります。
- Point①:6線式で配線する
6線式の配線が望ましいのは前回も述べたとおりです。リモートセンシングにより導体抵抗などの誤差を補正します。 - Point②:シールド線を使用し、正しく接地を行なう。(ウェイングインジケータ側で接地)
周囲の電気的ノイズから微小なロードセルの出力信号を守るためにシールド線を使用します。 - Point③:高絶縁の電線や端子台を使用する
微小な出力信号に影響を与えないように高絶縁の電線や端子台を使用します。
このように周囲からの影響を遮断することによってとによってロードセルは本来の性能を最大限発揮します。
正確な計量を行なうために、ロードセルは正しく配線することをお勧めします。
上記はロードセルに装着されているケーブルと6芯シールドロードセルケーブルの結線の関係を表したもので実際の結線では 接続箱(ジャンクションボックス)や 和算箱を使い行います。
エー・アンド・デイの接続箱、和算箱、端子台接続タイプのウェイングインジケータには高絶縁の端子台を 採用しています。また別売の6芯シールドケーブルには高絶縁の電線を使用しています。
3. コネクタの接触抵抗は問題にならないの?
ロードセルが能力を発揮するためには電気的ノイズ(外乱)を排除することが重要になることは前述のとおりです。ではコネクタに関してはどうでしょうか?
コネクタの接触抵抗は通常数十mΩあり、しかも温度変化や経時変化が大きいものです。数μVという微小なアナログ信号を出力するロードセルの信号計測にはコネクタの誤差要因も大きく影響してきます。 やはり、ここでも有効になってくるのがリモートセンシング機能(6線式の配線)です。印加電圧の変化分を補正してくれるリモートセンシング機能を使用すればその影響はほとんどなくなります。 つまりは接触抵抗の少ない大きなコネクタを使用するより、小型でも誤差を補正してくれる6線式の配線が行なえるものの方が有利になるのです。
4. ナイロン製のコネクタには要注意!
ロードセルが能力を発揮するためにはコネクタにも注意が必要であることは前述しました。 その中でもナイロン製(ポリアミド、PA66などと記述)のコネクタには特に注意が必要です。 ナイロンは低価格で柔軟性もあるため、安価なコネクタに多用されています。 しかし、その一方で水分を含みやすい性質のため、湿気により絶縁抵抗が低下しやすいという欠点があります。
多湿環境や結露の可能性のある場所でナイロン製コネクタを使用する場合は、十分な注意が必要となってきます。 コネクタの絶縁抵抗の低下による影響は、指示値のドリフト※3となって現れます。原因不明のドリフトがある場合には、一度コネクタの絶縁性を疑ってみてください。
- ※3
- ドリフト:指示(表示)値が安定せず、数値が徐々にずれていったりパラパラと変化している状態
エー・アンド・デイのコネクタ接続タイプのウェイングインジケータには高品質のメタルコネクタが 標準で付属しています。
5. ロードセルから出ているケーブルは切らないで!
ロードセルは印加電圧の変化の影響を受けるセンサであるため、6線式の配線が有利なことは以前に述べました。しかしながら、ロードセルから出ているケーブルは4線式のシールド線です。なんだか矛盾しているように見えますね。
実際、ロードセルから出ているケーブルの抵抗は温度により変化します。ですから、温度が高くなればロードセルに印加される電圧は下がり、出力電圧も下がってしまいます。ではどのようにしてこの問題を対策しているのでしょうか。
実はロードセルはこのケーブル抵抗の温度変化を含めた形で、内部で温度補償を行なっています。 言い換えれば、ロードセルから出ているケーブルはロードセルの一部なのです。 ですので、ロードセルから出ているケーブルが余っても切ってはいけません。 ケーブルが余るときは、ロードセルの近くに束ねておくようにします。