開発ストーリー・シリーズ「開発者の思い」:第41回
『ご挨拶』

シリーズ 『開発者の思い』 第41回
2016年03月28日

『ご挨拶』

2010年から投稿を開始した『開発者の思い』も、丸6年を経過して41回目となりました。以前から新しい分野に向けた新製品開発を進めて来ましたが、思った様な拡販が出来ませんでした。そこで新製品の開発主旨を、まずは自社の営業担当者に知らしめるべきと判断し、慣れない文書を書き始めました。しかし、自社のホームページを見る営業は少なく、むしろ社外の研究者が、測定機器について色々な情報を得る場として読まれたようです。この結果、客先に出向いたA&Dの営業担当者は、客先で『開発者の思い』について質問されて、初めてその存在を知り、内容を確認する事になったと聞いています。

営業からは内容が難しく理解できないなどのクレームもありました。技術をベースにした話は、各テーマや製品に関して問題意識を持たれた研究者には、面白く読まれたようです。その意味では、『開発者の思い』を連載したことは成功だったと思っています。また、当初、持ち回りで原稿を作成する予定でしたが、原稿作成を依頼した人が、だれ一人原稿を書いてくれませんでした。そこで私が個人で毎回担当する形になりました。このことは、開発部門に所属していても、自ら新製品を企画し、製品開発の原点となる『思い』を持つ人の大変少ない事を認識させられる結果となりました。また、新規市場開拓を目的とした営業上の組織対応が進まず、売上面では思ったような成果が出なかった事は残念な結果となりました。

会社の生き残りを賭けて、①既に市場にある物と同じものは作らない。②今現在、何処にも無い商品を企画&開発し、③生産&販売までを行うとの基本方針を掲げて、そして研究室市場を中心に、九州から北海道まで、また海外へも出向いてエンドユーザや販売店からの情報収集を行いました。そして得られた市場情報から新しい商品を創造し、自部門の持つ要素技術や新たな要素の導入を試みました。天びん市場における製品については、元素分析から生産ラインまで製品の守備範囲を垂直方向に展開し、また、分析天びんの市場にある既存の製品群については、エンクロージャやピペットに水平展開して商品群の拡大を目指して行きました。この事で、研究室における潜在的需要を掘り起こす、新たな商品群の確立を目指しました。

開発した商品の中で、加熱乾燥式水分計は、業界の最後発であったにも関わらず、数年で圧倒的な市場占有率を得た、例外的な成功例になりました。また国産唯一となる汎用電動ピペットやマイクロ天びん、音叉振動式粘度計やレオメータは、A&Dとしてある程度の新規市場を形成する事ができました。しかし、バランスエンクロージャ、PM2.5測定システム、ピペット関連の管理ツール、環境ロガー、微風風速計などは、今のところ市民権を得るには至っていません。また、マウスの自動体重計&運動量測定機、についても、道半ばとなっています。

再び機会が与えられれば、新たな商品の開発を進め『開発者の思い』に投稿したいと思いますが、近々60歳の定年を迎えますので、ひとまず筆をおく事とします。

製品開発の核心となる『思い』が、わずかでも読者に伝われば、目的が達成され、幸いだったと考えています。長時間に渡り連載を読んでいただきありがとうございました。改めて感謝とお礼を申し上げます。

(第一設計開発本部 第5部出雲直人)