試薬開発のために、機器の精度管理にはかなり神経を使っています。

インタビュアー まずは、新規事業部を設立された目的を教えてください。

大谷様 弊社は2003年に第二の創業としてバイオ関連研究用試薬に特化した新規事業部署を設置し、地域クラスター・ネットワーク^（注1） に参画しながら、アカデミア研究機関が開発した技術を導入して事業の立ち上げを行って参りました。今でいう「オープンイノベーション」^（注2） の先駆けになります。当時まだ大手企業は自前での研究開発が当たり前でした。

インタビュアー 具体的にどのような開発をされたのでしょうか。

山下様 私たちはナノ粒子の有用性に着目し、産総研^（注3） よりリポソーム^（注4） を利用したドラッグデリバリーシステム技術に関する特許実施許諾を受けると同時に、研究員を派遣し技術指導をしていただきました。その結果、研究用試薬として標的指向性リポソームを利用した分子イメージング試薬「GLYCOLIPO^™」の実用化に短期間でたどり着くことができたのです。

大谷様 生体内分子の一つである白血球をモチーフとした「GLYCOLIPO^™テクノロジー」は、リポソーム表面に糖鎖や抗体などさまざまな認識プローブを化学装飾することにより、リポソームに特定の分子標的に対する指向性を持たせることができる製品です。リポソームの内部に各種の物質を内包することができますので、生体イメージングのツールとして、また薬剤を内包することで薬物輸送のキャリアとしてご利用いただくことができます。

インタビュアー 目に見えないナノの世界での製品開発は、集中力ときめ細かさが要求されますね。

平松様 そうですね。目に見えないナノの世界なので、分析機器の精度管理が勘どころとなります。作業者は機器の使用に細心の注意を払っていますが、特にピペットによる採取・分取は古典的な方法で実施してい ましたので、検定操作や結果の取りまとめ、報告資料の作成にすごく時間がかかっていました。

A&Dさんのピペット容量テスターには、もっと早く出会いたかったですね（笑）。

インタビュアー ご利用いただいている分析天びんは、最小表示 0.01mgの「BM-252」ですね？

杉原様 そうです。ひょう量が250gまでほしかったので、ちょうど都合がよい天びんでした。除振台の「AD-1671」もセットで使っていますので、安心して正確に測定できてありがたいです（笑）。

山下様 A&Dさんの天びんは無風イオナイザーが付いていて静電気が除去できますので、スタッフ一同、とても助かっています。特に冬季など乾燥シーズンには、イオナイザーが付いていない天びんは使えません（笑）。

杉原様 BM-252 には校正用分銅が内蔵されていますし、安心して利用させていただいています。

インタビュアー ピペット容量テスターとリークテスターもご利用いただいていますね？

大谷様 A&Dの営業の方に薦められてピペット容量テスター「BM-014」とリークテスター「AD-1690」を購入しましたが、精度管理のためにこれほど便利なツールはないと驚いています。それまでは時間をかけて古典的な方法で大変な神経を使ってピペットの精度管理をしていましたが、ピペット容量テスターのおかげで簡便に定期点検ができるようになりました。また、日常的な点検には、リークテスターが便利ですね。

杉原様 当事業所では全部で20本以上のピペットを使用していますが、ピペット検定の作業が簡便になり、時間短縮もできますので、とても助かっています。容量の小さいピペットは振れが大きいので、検定にはとても気を遣います。正直に言えば、以前は苦痛だと思ったこともあります（笑）。

平松様 新人の社内研修においても、活用しています。

インタビュアー 具体的にどのような研修をされていますか？

平松様 ピペット容量テスターのソフトで合格範囲を設定できますので、合格できるように基本技術を習得してもらっています。おかげさまで新人でも誤差がほとんどありません。こんな便利なツールなら、もっと早く出会っていたかったですね（笑）。

「価値ある技術」「価値ある商品」を創造し、「価値あるサービス」を提供することで社会に貢献する。

インタビュアー 今後の展望を教えてください。

大谷様 目まぐるしく変化するこのライフサイエンス市場において、顧客の研究開発・製品開発のお手伝いをすることによって、弊社の経営理念である「価値ある技術」「価値ある商品」を創造し、「価値あるサービス」を提供していきたいですね。試薬屋の役割として、新しい技術を提案・発信することで研究試薬市場の形成・牽引をしていきたいと思っています。

山下様 中小企業の長所である柔軟性を生かし、海外導入品が多い試薬市場において、世界標準を目指した「国産技術を海外市場へ」向けた技術開発ならびに製品開発を引き続き行って行きたいと考えています。

インタビュアー 本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

（聞き手：株式会社エー・アンド・デイ 販売促進部）