情報マガジン『WAY』

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VOL.25 2020.DECEMBER 一般社団法人 日本血液製剤機構様

ユージングシーン
A&D製 卓上型引張圧縮試験機
(フォーステスター)MCT-2150

A&D製 卓上型引張圧縮試験機(フォーステスター)MCT-2150

病理組織学と生化学に物理・力学的パラメータ(注1)を加えたことで、これまでの薬理研究とは異なる切り口で血液製剤(注2)の薬効評価が可能になりました。

一般社団法人 日本血液製剤機構様にインタビュー

「善意と医療のかけ橋」の基本理念のもと、善意の献血を基に血液製剤を必要とする多くの患者さんと医療関係者に、血液製剤を安定的にお届けしている一般社団法人 日本血液製剤機構様。
新たな血液製剤をつくるための基礎研究に、A&Dの音叉振動式粘度計「SV-Aシリーズ」と卓上型引張圧縮試験機「MCTシリーズ」をご採用いただいています。

インタビューいただいた一般社団法人 日本血液製剤機構研究開発本部 中央研究所 蛋白薬理研究室 主査 久保 純様(理学博士、MBA)の画像

一般社団法人 日本血液製剤機構
研究開発本部 中央研究所 蛋白薬理研究室
主査 久保 純様
理学博士、MBA

血液製剤は、健康な方々から無償で血液を提供していただく「献血」でつくられています。

インタビュアー 血液製剤とは、どのようなものなのでしょうか?
久保様 人の血液や、血液から得られた成分を有効活用した医薬品です。献血で集められた血液の半分は輸血用血液製剤として、残りの半分は血漿分画製剤(注3)としてさまざまな医薬品になり、患者さんに提供されています。
インタビュアー 人の血液から医薬品がつくられているということですか?
久保様 そうです。血液という貴重で限りある資源を有効に活用して、有用な血漿たん白質成分を新たな医薬品として開発しています。
人の血漿中には約300種類の血漿たん白質がありますが、多くの成分が生命維持に関係する多様な生理作用を持っています。
そのため単一の血漿たん白質が複数の薬効を持つことが多い反面、化学合成医薬品のように新薬が次々と誕生することはありません。
インタビュアー 現在は、どのような研究開発をしていらっしゃるのでしょうか?
久保様 約300種類の血漿たん白成分のうち、現時点で医薬品として活用できている物質はまだ10種類くらいです。
残る290種類の中にも、新たに医薬品として開発できる物質が存在しますので、私たちは最新の技術を用いて血漿分画製剤の分野から新たな医薬品を開発し、また既存の製剤を改良する研究開発を続けています。
インタビュアー 例えば、どのような疾病の治療に用いられているのですか?
久保様 血友病(注4)、感染症や免疫異常の治療、救急医療で用いられることが多いです。
弊機構の主力製品の免疫グロブリン製剤(注5)は、毎年10万人以上の患者さんに投与されています。

血漿たん白成分の一部がゲル化する経過を捉えたくて、粘度計を採用しました。

インタビュアー 音叉振動式粘度計「SV-10A」を、どのような研究に利用されているのですか?
久保様 粘度計を導入するまでは、病理組織学と生化学をパラメータとして研究していましたが、客観的な指標として何か足りないなと。
血漿たん白成分の中に、時間の経過とともにゲル化して固まってくる物質があるので、このゲル化のカイネティクス(注6)を物理・力学的な視点も加え、より多角的に解明したいと思いました。
そこでインターネットで検索したら、SV-Aシリーズを使った論文がいろいろ出てきたので、それらの論文を読んで「これなら信頼できるな」と思いました。
インタビュアー 研究室に「SV-10A」が3台も並んでいるので、驚いています。
久保様 まず1台導入しましたが、私が行いたい試験は1回の測定に長ければ1週間かかるので、いまは3台同時に使って効率アップを図っています。
粘度計には回転式の装置もありますが、回転式は測定中に被測定物の形状を変えてしまうので、この研究には不向きです。
音叉振動式は少量の被測定物の形状を変化させることなく、シンプルに測定することができるところがよいですね。

引張圧縮試験機も導入して、いまではほぼ完全な基礎研究が実現しています。

インタビュアー 引張圧縮試験機「MCT-2150」をご採用いただいたきっかけは、どのようなことですか?
久保様 「強度を測定する装置」をインターネットで検索して、A&Dさんのホームページに行き着きました。
数多くの試験動画が掲載されていたので、「これなら簡単に操作できるな」と思いました。動画は疑似体験できるので、わかりやすくてよいですね。
インタビュアー 実際にご利用になって、いかがでしたか?
久保様 ラットの臓器を使った試験などに利用していますが、卓上型で治具も多く、カラータッチパネルで使いやすいと思います。血液製剤に代替品がないように、この試験機にも代替品はないんじゃないですか。
インタビュアー 粘度と強度を測定することが、研究の進歩に貢献したということでしょうか?
久保様 いままでは血液製剤の基礎研究に物理・力学的データを取り入れるケースは少なかったのですが、この粘度計と引張圧縮試験機を導入したことで、いままでの薬理学的アプローチでは欠けていたパズルのピースがしっかりはまり、ほぼ完全といってよい基礎データの取得が実現したと思っています。
インタビュアー 今後の抱負をお聞かせください。
久保様 「献血」により、血液という人の生命の一部をご提供いただいています。
責任を持ってしっかり使わせていただいて、治療を必要とする患者さんの生命を助ける医薬品を開発することが私たちの使命です。
病気やけがの治療のため、輸血や血液製剤を必要とする人たちが大勢いらっしゃいます。
私たちは、献血にご協力いただいている多くの方々の善意にお応えできるよう、新たな血漿分画事業の歴史を切り拓いていきたいと考えています。
インタビュアー 本日は貴重なお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

(聞き手:株式会社エー・アンド・デイ 広報IR課)

お客様情報

一般社団法人 日本血液製剤機構
本社
東京都港区浜松町二丁目4-1 世界貿易センタービル7階
事業開始
2012年10月1日
代表理事
石川 隆英
従業員数
1,150名(2019年3月31日時点)
売上高
約300億円
URL
https://www.jbpo.or.jp/
一般社団法人 日本血液製剤機構 中央研究所(兵庫県神戸市中央区) 外観画像

お使いいただいているA&D製品

音叉型振動式粘度計 SV-Aシリーズ JIS Z 8803 液体の粘度・測定方法特許取得済

液体中で振動子を共振させ、振動子を一定振幅で動かすのに必要となる加振力から粘度を求めます。

  • 測定範囲0.3mPa・s~ 低粘度領域の粘度測定が可能
  • 粘度の変化・安定をリアルタイムに測定
  • 撹拌しながら測定が可能
  • 連続的に自動測定~自動終了
  • パソコン取込みソフトウェア標準付属
音叉型振動式粘度計 SV-Aシリーズの製品画像
卓上型引張圧縮試験機 MCTシリーズ(フォーステスター)

フォースゲージ・プッシュプルゲージに代わる力測定機 『強さ』が見える!

  • カラータッチパネルで視認性がよく簡単操作
  • 高精度なロードセル付属で、電源を入れればすぐに使用可能
  • 試験速度をデジタルで簡単に設定可能
  • 変位表示を標準装備
  • パソコン取込みソフトウェア標準付属
  • 卓上にて使用可能な省スペース設計 250(W)×405(D)×711(H)mm