『計量豆知識』
計量技術情報 【計量豆知識 第3回】
1. デジタルロードセルって何?
カンタンに説明しますと……
実はロードセルの基本構造は、アナログロードセルもデジタルロードセルも全く同じで、内部はアナログ電圧の出力なのです。
異なるのは、デジタルロードセルでは、ロードセルの内部でA/D変換や、デジタルフィルタ、直線性補正などのデジタル演算処理まで行ってからデジタル信号として出力する点です。
デジタルロードセルであっても、CDやDVDのように、最初からデジタルデータというわけではないんです。
2. デジタルロードセルの出力はアナログロードセルの出力と何が違うの?
どちらの方式のロードセルも、内部ではアナログ電圧として荷重を出力していますが、このアナログ電圧というのが、厄介なことに非常に小さい電圧なのです。
質量表示に換算すると、1目盛あたりの電圧は1μV前後です。何だかピンときませんよね?
乾電池の電圧が1.5V程度ですから、その1/1,000,000くらいの微小電圧です。そのため、ノイズや熱起電力など、環境の影響にデリケートなのです。
そこでデジタルロードセルは、この厄介な微小電圧をロードセルの内部で環境の影響を受けにくいデジタル信号に変換して出力しています。
3. デジタル出力ってどんな出力?
A&Dのトラックスケール用デジタルロードセルの出力は、代表的シリアル通信の一つであるRS-485という方式を使用し、通信プロトコル(通信手順のきまり)には、仕様が一般公開されているModbus-RTUという方式を使用しています。
また、デジタル出力からは、荷重(質量データ)の他に、過負荷情報やメーカー名、機種名、シリアル番号など、アナログロードセルでは得られない情報もデジタルデータとして得ることができます。
4. デジタルロードセルは互換性があるの?
アナログロードセルとの互換性は一切ありません。
アナログロードセルの場合、メーカーが違ってもロードセルとインジケータは自由に組み合わせる事が可能でしたが、デジタルロードセルの場合、使用するインジケータと同じ会社のデジタルロードセルを使用する必要があります。
たしかに、“デジタルロードセル共通仕様” により基本的な部分は多いですが、各社独自の仕様追加も可能となっています。よって、デジタルロードセルとインジケータの組み合わせによっては、動作しない部分が発生する事が考えられますので、使用するデジタルロードセルとインジケータは同じ会社の製品を選択する必要があります。
また、デジタルロードセルの印加電圧も各社それぞれ異なっていますので、ハードウエア的にも他社製品の物を使用する場合は注意が必要です。
5. 誤配線は大丈夫?
弊社製のデジタルロードセルの場合、誤配線対策もしていますので、問題ありません。 また、アナログロードセルとデジタルロードセルと取り間違えて扱っても、問題ありません。
6. デジタルロードセル用のロードセルケーブルは?
アナログロードセル用のロードセルケーブルは使用できません。
これは、RS-485等のシリアルデータ通信用に設計されたケーブルではないのが理由です。よって、デジタルロードセルには、シリアルデータ通信用のシールド付きツイストペアケーブル(2対:4本)を使用します。
デジタルロードセルのケーブルは、1対が通信用でもう1対がDC電源用です。
接続箱を使用しロードセルケーブルが長くなると、ケーブル抵抗が大きくなり電圧降下が発生します。
電圧降下が発生した場合でもDC6V以上、DC12V以下の電圧が印加されている必要があります。
電圧降下が大きく印加電圧が確保できない場合は、導体断面積の広いケーブルを使用してください。
7. アナログロードセルとデジタルロードセルの四隅の調整方法の違いはあるの?
複数のアナログロードセルを和算しはかりを作る場合、個々のアナログロードセルの出力調整を和算箱の中のポテンショメータ(可変抵抗器)で調整をおこないます。
また、個々のロードセルへの偏置誤差調整も通常和算箱のなかでおこないます。
デジタルロードセルの場合、出力調整は必要ありません。偏置誤差調整は、インジケータから四隅調整としてデジタルで調整します。
8. どのデジタルロードセルが故障したか簡単に分かるの?
あるひとつのロードセルが故障した場合、アナログロードセルの場合はその特定は困難ですがデジタルロードセルでは、個別に信号を取り出すことで容易に故障したロードセルを特定できます。
各デジタルロードセルからはそれぞれ個別の信号が出ているため、デジタルロードセルが故障すると そこからの信号が途絶えるためインジケータはどのロードセルから信号が来ていないか容易に特定できます。