正しい方法で精度と安全性を確保!
電子天びんのクリーニング推奨手順
1. どうしてクリーニングが必要なのでしょうか?
計量皿に埃や試料の残りが付着すると、それにより僅かな重量差が発生し、計量精度が悪化する恐れがあります。また、異なる試料が混ざり合うことによるクロスコンタミネーションは、試料によっては安全性に重大な問題を引き起こします。さらに、機器を汚れた状態で放置しておくことは、機器の劣化を早めることにつながります。
つまり、あなたの大切な電子天びんを、精度良く安全に、そして長く使い続けるためには、適切な頻度でクリーニングを行う必要があります。
2. クリーニングの適切な頻度と、普段から気を付けるべきことは?
計量する試料や汚れ具合にもよりますが、毎使用後に実施するのが最善です。加えて、毎使用前にも汚れがないか確認するよう、SOP(標準作業手順書)などで決めておくと良いでしょう。
天びんを使用する際、なるべく汚さない工夫をしてください。例えば、粉体の計量には折り目を付けた薬包紙や計量ボートなどの容器を使う、息を吹きかけない、(風防がある天びんでは)できれば風防の外で試料を容器に入れる、といったことが挙げられます。
3. 安全にクリーニングを行うために
あらかじめ、天びんの電源は切って(ACアダプターを抜いて)おきましょう。
人体に有害な試料を計量した際には、ゴム手袋やマスク、コート、ゴーグルを着用するなど、安全に十分な配慮をしてください。計量担当者とクリーニング担当者が同じでない場合は、知らずにクリーニングを行うと危険ですので、注意が必要です。
4. クリーニングの方法(試料が比較的無害である場合)
A) 粉がこぼれていたら
柔らかい刷毛を使って掃き出してください(※帯電しづらい動物繊維の毛材が理想です。また、スポンジタイプのブラシはおすすめしません)。計量皿、皿受け、風防リング、ダストプレートなど(注1)を外し、その下に残っている粉も全て掃き出します。その際、皿ボス周りの隙間から粉が天びん内部に入らないよう、刷毛は内側から外側へ動かすようにしましょう(皿受け等を外す際にも、粉が天びん内部に入らないよう気を付けてください)。表示部など、計量皿周り以外も、粉がかかっていたら綺麗にしてください。
最後に、埃の出ないティッシュやペーパータオル、または布で乾拭きし、細かな汚れを取り除いたら、外した部品を元に戻してください。
なお、埃や粉のクリーニングには、大小2本の刷毛(動物繊維)とセーム革のクロスがセットになった、AX-CLEANING-SETが便利です。
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B) 液体がこぼれていたら
埃の出ないティッシュやペーパータオル、または布で拭き取ってください。粉の場合と同様に、液体が天びん内部に入らないよう気を付けながら、計量皿、皿受け、風防リング、ダストプレートなどを外し、その下に残っている液体も全て拭き取ります。表示部など、計量皿周り以外も、液体がかかっていたら綺麗にしてください。
粘り気があるなどで落ちにくい汚れは、水か中性洗剤を含ませて拭き取ると良いでしょう。塗装されていない金属部分(注2)であれば 、エタノールやイソプロパノール(IPA)を使用しても構いません。但し、他の有機溶剤や研磨剤の使用は避けてください。
表面が十分に乾いたら、外した部品を元に戻してください。
分析天びんで、風防が簡単に取り外せるタイプのもの(注3)は、先に取り外しておくと作業が楽になります。また、風防ドアのレールにゴミが溜まると、クロスコンタミネーションの原因となるだけでなく、ドアのスムーズなスライドを妨げますので、ここもしっかりと掃除しましょう(※風防ドアが完全な吊り下げ式でレールのない分析天びん(注4)であれば、その心配はありません)。
<その他の注意事項>
- 空気を吹き付けて、粉や液体を飛ばすことはしないでください。天びんの隙間や内部に入り込む恐れがあります。
- 洗浄液(中性洗剤やエタノールなど)は、スプレーで吹き付けたり、容器から直接かけたりせず、必ず布等に含ませてから使用してください。天びんの内部に入り込む恐れがあります。
- 皿ボスに力を加えたり、皿受けと計量皿を皿ボスに取り付けた状態で強く拭いたりしないでください。質量センサーにダメージを与える恐れがあります。
- 防塵・防水天びんの皿ボス周りにあるダイアフラムは、変形させないようにしてください。防塵・防水性能を損なう恐れがあります。
5. クリーニングの方法(試料が有害である場合)
まず、前述したように、保護具を着用するなど、安全に十分な配慮をした上で作業を行ってください。
計量皿、皿受け、風防リング、ダストプレートなどに加え、分析天びんの風防も取り外せるものは取り外してください。さらに、自分で分解・組立ができる風防(注5)は、可能な限り分解してください。
埃の出ないティッシュやペーパータオル、または布に中性洗剤を含ませ、天びん本体と各部品を念入りに拭いていきます。天びん本体は、計量皿周りだけでなく、筐体から表示部にいたるまで。また、天びんの周囲も、有害な試料が付着しているかもしれないので、同じく念入りに拭いてください。金属製の部品(計量皿や風防リング、ダストプレートなど)は、必要に応じてオートクレーブによる滅菌も可能です。
帯電防止剤が塗布された風防(主にプラスチック製のもの)は、水や中性洗剤で繰り返し拭き取り作業をしていると、次第に帯電防止剤が落ちてきます。その際は、市販の帯電防止剤を塗るようにしてください。一方、エタノールやイソプロパノール(IPA)で拭くと、帯電防止剤がすぐに取れてしまうだけでなく、ひび割れや劣化の原因になります。上記、『4.クリーニングの方法(試料が比較的無害である場合)』で説明した通り、エタノールやイソプロパノール(IPA)の使用は、塗装されていない金属部分に限定してください。また、他の有機溶剤や研磨剤は、どの部分にも使用しないでください。
その他の注意事項についても、『4.クリーニングの方法(試料が比較的無害である場合)』で述べた内容と同じですので、参照してください。
6. クリーニングを行った後は
天びんを使用する前に、電源を入れて十分にウォームアップ(注6)させ、水平が取れていることと、各部品が正しく取り付けられていることを確認してください。それから分銅を載せて正確さを見て、基準値を満たしていなければ、内蔵分銅または外部分銅による感度調整を実施してください。(※これら一連のプロセスについても、SOP(標準作業手順書)などで決めておくと良いでしょう。)
7. その他
GX-AWP/GF-AWPシリーズやFZ-iWP/FX-iWPシリーズのような防塵・防水(IP65)天びんであれば、直接水をかけて汚れを流し落とすことも可能です(注7)。特に天びんが汚れやすい現場では、こういった天びんを導入すると、クリーニングが非常に楽になります。
- (注1)天びんの機種によって、付属している部品、取り外しが可能な部品に違いがあります。事前に、各天びんの取扱説明書で確認しておきましょう。
- (注2)樹脂やビニール部分(ケーブルなど)に使用すると、ひび割れや劣化が生じる恐れがあります。
- (注3)GX-A/GF-Aシリーズ、HR-AZ/HR-Aシリーズなど。
- (注4)現在、BA-T/BAシリーズが、そのタイプとなっています。
- (注5)BA-T/BAシリーズの風防は、内側の小風防も含め、ガラスの一枚一枚まで分解できます。
- (注6)ウォームアップに必要な時間については、各天びんの取扱説明書を参照してください。
- (注7)天びんの下側から水流を当てたり、水に漬けたりはしないでください。