開発ストーリー・シリーズ「開発者の思い」:第2回
生産ライン専用計量器の開発

シリーズ 『開発者の思い』 第2回
2010年04月15日

生産ライン専用計量器の開発

(AD4212C:電磁式デジタルロードセルについて)

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日本経済の縮小傾向が長らく続く現状がありますが、数は少なくても成長している市場はあります。例えば、1次・2次電池、太陽電池、FPD(フラットパネル)、LED照明などの業界がそれに当たります。これらの成長市場は環境問題とリンクしており、今後もしばらくは高い成長率が続くと判断されています。

成長産業では当然新しい提案となる製品開発が焦点となりますが、同時に性能と生産性に関わる品質を如何に確保するのかが大きな課題となっています。特にリチウムイオン2次電池では封入される電解液量が諸性能に大きな影響を与えます。その他の分野でもパネルに封入されるレジストインクの量やコーティングに利用される樹脂量、接着剤、半田ペーストなどの生産ライン上での塗布量管理が重要との認識が深まっています。

この背景から生産ラインでは汚れに強く、高精度&高速で応答し、かつ耐久性のある小型計量器が必要となります。AD4212Cシリーズは、上記ライン計量に必要となるすべての要求に答えられる製品として企画開発しました。計量器の幅は59mmとなり、対向配置による計量ピッチ30mmを可能としています。高速応答では例えば秤量600g×最小表示1mg(分解能60万分の1)の機種で実力0.5秒となる世界最速を実現しました。また感度1mgとなる計量器では業界初の計量時の防塵・防滴等級IP65(全方向からの放水に耐える)、繰り返し計量による耐久性1,000万回を達成しました。耐久試験は現在継続中となり最終的には約2年後の1億回の達成を目標としています。また、複数の計量器を集積して使用する事を考慮し、計量部からの直接デジタル出力機能となる電磁式デジタルロードセル(EM-DLC)機能と専用コントローラAD8923を利用したCC-linkとBCD出力をオプション設定しています。

開発段階では、設定された多くの目標仕様を実現する為、①電磁平衡式の特長となる高速応答を極める為の質量センサ(ハード)と電気回路、および制御ソフトの最適化 ②僅かな空間に耐久性を高める為のショックアブソーバを配置 ③既存の汎用天びんに利用されているC-SHS:コンパクト-スーパーハイブリットセンサのセンサ幅を狭くする ④防水用ダイヤフラムを皿受け軸円周に配置 ⑤計量部への全電子回路内蔵化など、技術的に難しい問題を解決しました。特に皿受け軸をダイヤフラムで覆いかつ1mgの感度を出す事は、高精度と汚染に強い(耐環境性能)という相反する内容となり、それまでの計量器業界の常識を覆す製品とする事ができました。

AD4212Cが産業界の生産用自動機から、真空など特殊環境下での精密計量分野で利用され、CO2削減機器関連部品の品質と生産性向上に貢献し、また今後の産業界の新たな分野で技術開発のツールとして利用される事を希望しています。

(第一設計開発本部 第5部出雲直人)